仙台高等裁判所 昭和25年(ラ)11号 決定 1952年3月01日
抗告人 小倉りき
右代理人弁護士 村川光枝
事件本人 小倉光一
主文
原審判を取消す。
事件本人小倉光一を準禁治産者とする。
理由
本件抗告の理由は別紙抗告の理由と題する書面記載のとおりであつて、これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。
抗告人の本件準禁治産宣告の申立は、抗告人の夫である事件本人が心神耗弱者であることを原因とするものであるが、記録添附の事件本人の戸籍謄本によると、抗告人は事件本人(明治二十二年三月二十九日生)に大正五年五月二十五日婚姻し爾来夫婦であることが認められ、証人小倉ヨネ、小倉ハルの各証言及び事件本人の供述を綜合すると、事件本人は右婚姻後昭和五年以来四回に亘り精神上の病気のため山形脳病院に入院して加療を受けたものであることが認められる。
そこで事件本人が心神耗弱者であるかどうかについて審案するに証人小倉ヨネの証言、事件本人の供述及び鑑定人医師二松修治の鑑定の結果を綜合すると、事件本人は精神運動興奮状を呈し、慢性の軽躁状態に移行し、社会生活において完全な適応を営み難く利害の判断に欠けるところがあつて、現に準禁治産宣告の原因である心神耗弱の状態にある者であることを認めることができる。証人小倉ハル、小田長二及び村谷豊の各証言によつてもこれを前掲証拠及び証人鈴木伝六の証言と対照するときは右認定を左右するに足らないし、他に右認定を動かすに足る資料はない。しかして心神耗弱者を準禁治産者として保護すべきものとする理由は、心神耗弱者は精神が薄弱で利害を判断する能力に欠けるところがある点にあるのであるから、心神耗弱者である以上はこれに対し準禁治産の宣告をすることを要するものというべきである。以上により抗告人の事件本人に対する本件準禁治産宣告の申立は相当である。
よつて右に反する原審判は不当で本件抗告は結局理由があるから原審判は取消すべきものであるが、本件については記録に徴し当裁判所において審判に代わる裁判をするのを相当と認めるから、家事審判規則第十九条第二項に則りここに前示の理由により主文のとおり決定する。